masaono777

Tech Venture/テックベンチャー

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こらむ(山本尚利)

23 3月

「国家最優先技術課題:日本版グリーン・ニューディールではない」

山本尚利

1.米国オバマ政権の目玉:グリーン・ニューディール政策
2009年3月19日、NHKにて米国のグリーン・ニューディール政策の特集番組が放映されました。この政策は周知のように米国オバマ大統領の米国産業再生の目玉となっています。NHKは、米国同様にエネルギー・環境技術が日本の景気回復の目玉になるというスタンスでこの番組を企画したようです。
この番組で現在の米国でどのような社会システム革新の研究が行われているか、よくわかりました。筆者はクリントン政権時代の1993年~2001年に米国の電力規制緩和と環境規制の調査に従事しており、米国のエネルギー・環境技術動向を調査してきました。2001年1月、ブッシュ・ジュニア政権誕生とともに、クリントン政権時代に環境運動家出身のアル・ゴア副大統領の主導した環境規制は完全否定されてしまいました。2009年1月、オバマ政権誕生とともに、アル・ゴア時代が再び蘇る勢いです。ただエネルギー技術開発に関して、ブッシュ政権は脱石油時代到来を見越して原子力発電技術の再興に注力しました。クリントン政権時代の米国原子力発電は逆境にあり、技術進歩が止まっていました。 米国の軍事覇権にサポートされたブッシュ政権は、原子力技術を国家覇権技術と位置づけ、米国の原子力発電技術の再興を目指したのです(注1)。2006年、東芝がウェスティングハウス(米国の重電機メーカー)の原子力事業部門を買収するのを米国覇権主義者が許したのは、日本に追い越された原子力発電技術(とりわけ製造技術)を再度、取り込むためではないかと筆者はにらんでいます(注2)。

2.米国のエネルギー・環境技術力(グリーン技術力)をみくびってはいけない 
オバマ政権はクリントン時代、ブッシュ時代を通じて、長期的に行われてきた米国のエネルギー・環境技術開発を踏襲しています。NHKは、エネルギー・環境技術に関して、今日、米国より日本の方が進んでいるかのような前提で番組を放映していましたが、筆者の経験では、米国のエネルギー・環境技術が日本より後れを取っているとは言えません。このような誤った認識を国民に植え付けると、戦前の日本と同じく、大きな過ちを犯す危険があります。
まず、電気自動車(EV)に関して、筆者の勤務したSRIインターナショナル(元スタンフォード大学付属研究所)はすでに1984年にEVに関する大規模な調査を行っています。トヨタの開発したハイブリッド・カーのコンセプトもこのレポートに入っています。またSRIの研究所内では筆者が所属した1986年にはEVが移動手段に使用されていました。次にリチウム電池に関しても、GMの系列、デルファイが早くから研究していました。米国ではリチウムポリマー電池(安全性の高いシート状の固体電池)の開発が進んでいました。また米国ではITを活用した発電事業者間のリアルタイム電力取引も行われていましたし、ITベースのDSM(Demand Side Management、電力需要の最適制御)も行われていました。2001年に破綻したエンロンは電力取引のイーコマースを手がけていました。
NHKが紹介したように、EVを軸にした社会システム革新のコンセプトが米国で進んでいるのは、上記のようにその下地がすでにできているからです。オバマ政権になって唐突に出てきたものではありません。自動車社会の米国では世界に先駆けて、オバマ政権時代に本格的EVインフラが実現しそうです。米国の中でもEVインフラの先陣を切るのはカリフォルニア州でしょう。とくにロサンゼルスの大気汚染は限界に来ています。

3.グリーン技術は米国や日本の経済再生の原動力となるか
80年代の構造不況に悩んだ米国はクリントン時代のNII(情報スーパーハイウェイ構想)政策によって、90年代に見事に経済再生を果たしたのは記憶に新しいところです。それではオバマ政権のグリーン・ニューディール政策(GND)は90年代のNIIのように、2010年代米国の経済再生に貢献できるでしょうか。筆者の見方は残念ながらネガティブです。  かつて日本の通産省はサンシャイン計画(新エネルギー開発)とムーンライト計画(エネルギー貯蔵や環境技術開発)という国家プロジェクトを産官学で行っていましたが、これは実に的を射た命名でした。サンシャイン・プロジェクトは産業界にとって優先的技術投資課題となりえますが、ムーライト・プロジェクトは副次的な技術投資課題となりがちで、投資優先度が後回しになります。たとえば、中国の環境対策が遅れているのはサンシャイン投資(発電所建設)で精一杯、ムーライト投資(環境対策)の余裕がないからです。60年代高度成長期の公害日本も同様でした。
オバマ政権のグリーン技術は、どちらかといえば、ムーンライトのカテゴリーに該当します。要するに、自ら光らない月明かり(グリーンライト)なのです。クリントン時代のNIIはインターネットを普及させ、一大IT社会を米国のみならず世界規模で実現させる原動力がありました。しかもNIIによるIT社会は資本主義原理の下で自律発展するメカニズムを有していました。一方、GNDは自律発展するメカニズムがNIIに比して圧倒的に不足しています。GNDが自律発展する条件、それは石油価格の上昇にあります。原油価格が200ドル/バレルのレベルに達しない限りGNDは短期的には成功しても、長期的に米国経済再生の原動力にはなりにくいでしょう。この点は日本にも当てはまります。しかしながら原油価格が200ドルレベルに達したからといって、再生エネルギーが国家エネルギーの主力になる可能性は極めて低いわけです。
その観点からGNDによるグリーン技術投資にあまり期待することはできません。近未来、原油が200ドルになったとして、CO2の削減に大きく寄与するのは再生エネルギー(太陽光発電や風力発電などでムーンライトのカテゴリー)ではなく、やはり原子力(サンシャインのカテゴリー)でしょう。ただし、原子力はCO2を出さない代わりに放射性廃棄物を出します。その意味で原子力は石油や石炭と同様、地球環境にとってハイリスクなエネルギー源です。  ところで米国NIC(国家情報評議会)の2025年予測レポート(2008年11月発行、SRIも予測に協力)の中でも、2025年までの主力エネルギーは石油であると述べられています。近未来、オバマ政権が米国社会をEV化できたとしても、その一次エネルギー源における再生エネルギーの寄与はマイナーであるということです。 

4.グリーン技術に優先する日本国家の戦略技術とは
NHKの番組をみて、グリーン技術が日本の不況脱出の救世主となると期待するのは危険です。グリーン技術は、別途、光源がないと光らないということを忘れてはなりません。オバマ政権の中枢はこのことを十分認識しているでしょう。GND政策は金融システムの崩壊で落ち込んだ米国民を勇気付けるための一時しのぎです。つまりGNDは米国にとっても本来、国家技術戦略上の最優先投資課題となりえません。なぜならグリーン技術産業は半永久的に国家が補助していかなくては成り立たないからです。たとえば太陽光発電システムの普及に国家補助は不可欠です。その意味で太陽光発電は経済性の観点から資本主義社会では原子力発電や化石燃料発電に絶対に勝てないのです。
一次エネルギー資源も一次食糧資源も不足する日本ではなおさらのこと、グリーン技術は国家的最優先投資課題とはなりえません。まずエネルギー・環境分野で日本が最優先すべき技術投資課題は、やはり日本海域の石油・天然ガス資源の自前開発であり、原子力発電技術のさらなる自前開発です。エネルギー・環境分野以外でさらにいえば、日本周辺の極東脅威に対抗する防衛技術の自前開発、自給食糧資源の自前開発がグリーン技術よりはるかに優先します。これらの国家存立課題が達成されて初めて、グリーン技術を開発する余裕がでます。 国家技術戦略上、この優先順位を間違えると天然資源も防衛力も乏しい日本国家の存立自体が危うくなります。国家存立基盤を支える戦略技術課題は日本人の生存に直結しますが、グリーン技術は日本国民の生存が保障された後に重要となります。
一方、米国は、自国内に十分な天然資源(石油、石炭、天然ガス、穀物)を有し、世界最強の軍事防衛力を有しているからこそ、グリーン技術投資に進めるのです。日本とは国家存立基盤がまったく異なることを忘れてはいけません。何でもかんでも米国の後追いすることが正しいとは限りません。NHKの上記番組関係者はそのことがわかっているのでしょうか、大変疑問です。
(やまもと・ひさとし)

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注1:山本尚利[2003]『日米技術覇権戦争』光文社、52ページ 
注2:山本尚利[2008]『情報と技術を管理され続ける日本』ビジネス社、221ページ 

31 10月

「世界同時金融危機:ブラック=ショールズの功罪」

山本尚利

1.先の見えない世界同時金融危機
 現在、世界は株安、ドル安、ユーロ安に陥っています。米国発のデリバティブ金融バブル崩壊が今日の金融不安の要因であることは間違いありません。このあおりを受けて、日本も深刻な株安、円高に陥っています。2008年10月24日の日経平均株価7624円、1ドル95円と、株価は2003年4月28日の日経平均株価7607円(過去の底値)に迫っています。この状態が続けば、来年の日本の景気(製造業の支える日本経済の景気)は大きく後退するでしょう。2008年10月26日の日経新聞によれば2003年の株価収益率PER(時価総額/純利益)109倍に対し、今回は10.3倍です。
この数値から前回は構造不況による株価低迷であったのに対し、今回は世界同時金融危機による株価下落であることが明らかです。日本企業の力に比べて、異様に株価が下がっているということです。この状態はどうみても健全ではありません。もうひとつおかしなことに、前年度比(2007年10月末との比)の株価下落率が日本は54.3%(世界第8位)に対し、金融危機震源地の米国は39.8%(18位)にとどまっている点が挙げられます。また、対ドル騰落率(最近1週間)に関し、多くの国がマイナス(ドル高)となっているのに、日本のみプラス8%(ドル安)となっています。これはいったいどういうことでしょうか。日本の大幅な株安の原因は日本企業株主の30〜50%を占める外人投資家の換金売りといわれており、日本株騰落の原因はよくわかります。さらに外人投資家は海外の持ち株も換金売りして、手にした各国通貨にて円買いしていることになります。
ドル、ユーロに次ぐ世界通貨の円が今、投機の対象となっているわけです。ドルもユーロも信用できないので、消去法でやむを得ず円が選択されているのでしょう。このまま行くと、次に日本株が反転してV字型急騰する可能性すらあります。なぜなら、日本企業の業績は決して悪くないからです。日本の投資家あるいは日本政府が日本株を外人投資家から買い戻す絶好のチャンス到来です。

2.ノーベル経済学賞理論の功罪
 今回の世界同時金融危機はかつての日本の資産バブル崩壊と違って、米国中心のデリバティブ金融商品(金融派生商品)に対する信用の崩壊であるといわれています。そこで、デリバティブ金融商品について考えてみます。米国にてデリバティブ金融商品が普及した背景にはブラック=ショールズ・フォーミュラ(BSF)に代表される金融オプション理論があります。この理論は、後に、筆者の専門の技術経営(MOT)におけるハイリスクな技術投資プロジェクトや研究開発プロジェクトの評価法に応用されてきました。その関係で筆者は20年前の1988年ころから金融オプション理論に関心を抱き、当時、『オプション理論と応用』(大村敬一著、1988年、東洋経済新報社)を購入して勉強していました。ちなみに、この著者は2004年に早稲田大学大学院ファイナンス研究科(日本橋キャンパス)を立ち上げた教授です。
 さてスタンフォード大学教授のマイロン・ショールズ博士はBSF導出の功績により、1997年にノーベル経済学賞を受賞しています。ところが、彼の関与したヘッジファンドLTCM(Long Term Capital Management)が1998年、巨額損失を出して破産し、BSFの正当性に疑問がもたれました。にもかかわらず、その後、BSFを理論的バックグラウンドにしたデリバティブ金融商品市場は世界規模で普及していきました。
 ところでBSFとは何でしょうか。それは巨大な証券市場で日々、変動する多数の銘柄の株価を統計的母集団とみなして、その株式に投資する際のリスクとリターンを定量化表示する数式です。すべての株式銘柄に関する情報が完全に公開され、それに基づいて、多数の投資家が経済合理的に株を売買するという前提が成立すれば、BSF理論そのものに間違いはないと思います。要するに、今日の金融危機に関してブラック=ショールズ理論が悪いのではなく、BSF成立の前提条件を無視して、それを意図的に誤用した国際金融資本に責任があります。

3.ブラック=ショールズの理論が成立する範囲
 BSFの理論をわかりやすくいえば、サラ金の利子を想定すればよいでしょう。サラ金を借りる人は返済不能になる確率が高い。すなわちハイリスクの借り手です。そこで多数のサラ金の借り手を統計的母集団とみなせば、過去の経験に基づき借り手母集団の返済不能者の発生率が推定できます。そして貸し手が損しないレベルの利子率が容易に計算できます。オプション理論のオプション価額がサラ金利子率(しばしば高金利)に相当します。オプション理論を応用したデリバティブ金融商品にはその市場価格の変動リスクを引き受ける胴元(保険組織)が存在します。胴元はおのれが損しない範囲のオプション価額分だけ前金でもらうことによって、その金融商品の値下がりリスクを保証します。たとえば投資家は元本10億円のデリバティブ金融商品に投資する際、そのオプション価額、たとえば1億円の前金を胴元に払えばよく、市場価格が1億円以上値下がりしても損失は1億円どまりです。1億円を超える損失分は胴元が被ります。逆に、値上がりすれば1億円の捨て金で数億円あるいは数十億円を一瞬でもうけることができます。まさにバクチそのものです。
 ところでデリバティブ向け金融理論は、すべての企業は業績向上を目指すという前提で成り立つ会社株や社債、誰もが死を怖がるという前提で成り立つ生命保険、故意に交通事故を起こすドライバーはいないという前提で成り立つ自動車損害保険などには適用できるでしょう。なぜなら、これらの金融商品にはいっせいに価格暴落を起こす要因がほとんど存在しないからです。しかしながら、投機対象となりやすい住宅や不動産の購入ローンの証券化商品はデリバティブ金融商品として不向きです。なぜなら、住宅や不動産市場は不況などでいっせいに価格暴落を起こす要因が存在するからです。案の定、米国で2007年後半よりサブプライムローンの証券化商品の暴落がまず起こったのです。全世界でデリバティブ金融商品を販売してきた国際金融資本はこのリスクをあらかじめ予想していたでしょう。だからこそ自分がババを引かないよう、住宅ローンのデリバティブ金融商品を、さまざまな複合商品(CDOやCDS)に組み替えて転売し、おのれに降りかかるリスクの分散を図ったのです。

4.誰が悪いのか、証券化商品の暴落
 今回の世界同時金融危機をもたらした証券化金融商品の暴落は起こるべくして起きたものです。いったい誰が悪いのでしょうか。やはり、それはブラック=ショールズ理論の成立する前提条件を理解できなかった人たちです。つまりBSFの成立する前提条件からはずれる証券化商品を喜々として買った投資家たちです。世界の金融機関で資金運用する人たちは必ずしも統計数学に精通していないでしょう。BSFの本質がわかれば、到底、買えない商品が住宅ローン証券化商品を組み込んだデリバティブ金融商品でしょう。その意味でそれらを買った方が悪い。日本の金融機関は、プライムローンはともかく、少なくともサブプライムローンの証券化商品の危うさには気付いていたらしいので、幸いその被害は少なかったようです。しかし、今はサブプライムローン証券化商品を含むデリバティブ金融商品市場全体への信用がすっかり失われてしまったということです。
 しかし、だからといってBSF理論を全面否定してはならないでしょう。この理論は依然として、企業の株式市場、ハイテクベンチャー株式市場、将来的には知的財産権の売買市場の投資理論には十分有効です。

(やまもと・ひさとし)
16 10月

「日本人ノーベル賞受賞は高い買い物か」

山本尚利

1.手放しで喜べるか?日本人のノーベル賞受賞ニュース
 2008年10月上旬、歴史に残るビッグニュースが舞い込みました。4人の日本人のノーベル賞受賞が決まったからです。2008年度物理学賞の受賞者は、南部陽一郎、小林誠、益川俊英の3氏、化学賞が下村脩氏と合計4人です。誠におめでたいニュースに水を差すよう気が引けますが、この受賞ニュースを手放しで喜んでよいものかどうか、ちょっと待って!と言いたくなります。なぜなら、どうして唐突に日本人が受賞できるのか、今一不透明さを感じるからです。
 そこで思い起こせば、6年前の2002年にも、田中耕一氏、小柴昌俊氏がそれぞれ化学賞、物理学賞に輝いています。とくに、一介の企業サラリーマン研究員であった田中氏にとって、キツネにつままれたような男版シンデレラ・ストーリーだったわけです(注1)。当時の筆者は、彼の受賞に他人事ながら非常に感激したのを憶えています。この当時は何かウラがあるのではないかとはまったく疑いもしませんでした。
 その後、2005年、郵政民営化実現で国際金融資本オーナーに貢献した小泉純一郎前首相にノーベル平和賞を与える運動が、2007年トヨタ自動車出身で元経団連会長の奥田碩氏中心に行われているという報道に接し、最近のノーベル賞には何かウラがありそうだと筆者は疑いを持ち始めました(注2)。

2.中立性に疑いのある最近のノーベル賞
 筆者の専門MOT(技術経営)の方法論のひとつ、リアルオプション理論による技術評価法(注3)にて使用されるブラック・ショールズ・フォーミュラの元祖、マイロン・ショールズ博士(スタンフォード大学教授)は1997年ノーベル経済学賞受賞者ですが、彼の金融工学(投資科学)理論は、今日、米国発の世界的金融危機の原因となったローン証券化商品(CDO:Collateralized Debt Obligation)あるいは証券化ローンの保険付複合商品(CDS:Credit Default Swap)に応用されています。この例から明らかなように、ノーベル賞、とりわけノーベル経済学賞は国際金融資本オーナー(世界的寡頭勢力)に利用されている疑いが濃厚です(注4)。経済学は「沈黙の兵器」のひとつであるという世界的寡頭勢力の考え(注5)とも一致します。
 このようにノーベル賞に疑いをもって再度、今回の日本人のノーベル賞受賞劇をみると、前回2002年当時と極めて類似性が高いと感じざるを得ません。そこでまず、2002年当時のノーベル賞と国際金融資本オーナー(寡頭勢力)の関連性を挙げてみますと、2002年前後に、日本政府の外貨準備高が2000億ドルから8000億ドルと6000億ドル(60兆円規模)も急増しています。本件についてミスター円の榊原英資氏(早稲田大学教授)は「前代未聞の巨額ドル買い介入」と暗に、当時の竹中平蔵氏(経済財政政策担当大臣、金融担当大臣兼務)を批判しています(注6)。つまりこの時期、日本政府は米国覇権主義者の背後に控える寡頭勢力を非常に喜ばす金融政策をとっていたわけですが、この政策は日本の国益に反します(注7)。竹中金融政策のおかげで米国はイラク戦争の財源を確保できたはずです。2002年日本人のノーベル賞受賞劇は日本国民の目をそらす「ほめ殺し作戦」(対日国家ハラスメント)だった疑いが濃厚です。

3.今回の日本人ノーベル賞受賞劇の狙いとは
 さて、今回の日本人の2008年度ノーベル賞受賞劇と国際金融資本オーナー(寡頭勢力)の関連性とは何でしょうか。2008年10月10日のテレビニュースにて同年9月16日(リーマン・ブラザーズ破綻の翌日)から10月10日まで、日銀はおよそ半月(18営業日)でなんと38兆円も短期金融市場向け資金供給公開オペを行ったと報じられました。このオペはまさに米国発の世界金融危機で重傷を負った日本の金融システム維持のための緊急輸血のようなものです。2008年9月30日終値11160円(東証時価総額352兆円)だった日経平均株価が10月10日には8276円(時価総額261兆円)に暴落しました。その差、なんと91兆円です!しかし今回に限って、日銀の38兆円規模の資金供給ではまだ足りないかもしれません。
 この日本企業株の暴落の原因は、主に外人投資家の換金売りといわれています。そのため9月末から10月上旬にかけて、巨額の円需要が生じたということです。日本優良企業の外人持ち株比率は30~50%とみられますので、上記38兆円規模に匹敵する巨額の円キャッシュが外資(ヘッジファンドを含む)の手元に渡っているはずです。
 もし、彼らが手元円をただちに米ドルに交換しているなら、株暴落と同時に円の暴落が起きたはずですが、10月13日現在、円相場は1ドル99円台であり、円安が起きるどころか、むしろ円高傾向にあります。つまり彼らは円に比べて米ドル相場に、より不安をもっており、日本企業株の売却益を米ドルに交換したくともできない状態にあるとみられます。今の彼らは二つのシナリオをもっているでしょう。(1)近未来、米国連邦政府が金融政策に失敗して米ドルが暴落したら、再度、日本の優良資産を買戻しするシナリオ、
(2)公的資金注入を計画している米連邦政府の金融政策が評価されて米ドルの信用が回復したら、手元円をドルに交換し、信用収縮によって生じた損失の補てんに流用するシナリオです。
(2)のシナリオが選択されると外国為替市場にて、外資サイドから猛烈な円売り・ドル買いが起きることになります。しかし日銀が円を買い支えるはずですから、深刻な円暴落は起きないでしょう。ところで日銀は2008年9月18日、FRB(米国連邦準備制度理事会)と600億ドル(6兆円規模)の米ドルスワップ協定(日銀による他国通貨のドル供給は戦後初めての試み)を結んだと報じられています。これは(2)のシナリオを想定して、日本国民へのショックを和らげるための予行演習でしょう。
 上述した2002年前後の日本政府による60兆円規模の円売り・ドル買いオペでは、日本国民の預貯金が米ドルに化けて米国に還流しました(事実上、一方通行の円流出)。今回、上記(2)のシナリオが選択されたらどうなるでしょうか。仮に外資が総額60兆円規模の円売り・ドル買いを行ったら、日銀は米ドルスワップ協定で6000億ドル(1ドル100円と仮定)をFRBから調達して外資から円を買い取り、借りた米ドルを売ることになります。その結果60兆円規模の円がスワップ協定に従ってFRBの手元に残ります。このシナリオこそが今回、日本人ノーベル賞受賞劇で、またも日本国民を煙に巻こうとする狙いなのでしょう。
不景気に苦しむ日本人を元気付けるノーベル賞(4個)は一個あたりなんと15兆円の計算です。2002年のときは、ノーベル賞(2個)が1個あたり30兆円だったが、今回二度目なので、1個15兆円のバーゲンセールだよ、ワハハハ・・と寡頭勢力の高笑いが聞こえそうです。これが高いか安いか、ノーベル賞をことのほか有り難がる日本国民みなさんの考え方次第です(笑)。ちなみに対外債務超過に陥っている米国連邦政府が2002年前後に日本政府に売った60兆円規模の米国債の債務履行をすることはないと考えられます。なお、最近、予測をズバズバ当てて、世間の評価が高まっている副島隆彦氏によれば、2008年現在、日本の対米債権累積総額は600兆円規模に達している模様です(注8)。
(やまもと・ひさとし)

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注1:ベンチャー革命No.23『ノーベル賞受賞者田中耕一主任』2002年10月14日
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr023.htm
注2:ベンチャー革命No.230『小泉シンクタンク:トヨタのスモールギフト』2007年5月13日
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr230.htm
注3:拙著(共著)[2003]『最新 技術経営評価法』日経BP
注4:本山美彦[2008]『金融権力』岩波新書
注5:ベンチャー革命No.271『情報と技術を管理され続ける日本』2008年9月14日
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr271.htm
注6:榊原英資[2008]『強い円は日本の国益』東洋経済新報社
注7:日本政府が巨額の円売り・ドル買いをしても、買ったドルは日本国内では使えないので、結局、米国債で運用される運命となる。つまり当時の竹中金融政策は日本国民の預貯金が国民の知らぬ間に米国債(凍結債権)に化ける売国的金融政策であった。なぜなら対外債務超過に陥って財政破綻しているに等しい米国連邦政府に日本政府が購入した米国債を償還する財力があるとは思えないからだ。
注8:副島隆彦[2008]『恐慌前夜』祥伝社


19 8月

「裸の王様だった、技術立国日本」

山本尚利

1.評判の悪い日本のiPS細胞研究の国家戦略
 2008年8月13日の朝日新聞にiPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究(注1)に関して日本の国家戦略が見えないという批判記事が載っています。同研究の日本の権威、山中伸弥京大教授(再生医学研究所)は1993年より3年間、グラッドストーン研究所(GSI、サンフランシスコ)のポスドク研究員でした。この研究所はカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)発の非営利研究所だと思われます。
筆者が1986年より2003年まで所属したSRIインターナショナル(元スタンフォード大学付属研究所)とよく似た大学発の独立研究所(スピンオフ研究開発型ベンチャー)です。山中教授のGSIでの経験が同氏の研究観を形成していることは、さまざまな関連記事における同氏の発言から明らかです。日米の研究文化、特に、ハイリスクのサイエンス、ハイテク(先端技術)の研究文化は日米で大きく異なることを同氏は体験していると思われます。
 上記の新聞報道によれば、iPS細胞の研究開発戦略に関して、政府の総合科学技術会議の作業部会が半年がかりでまとめた研究推進策の評判がよくないようです。なぜでしょうか。筆者からみれば上記は当然の反応です。なぜなら、この新聞記事を読むまでもなく、iPS細胞関連技術に限らず、ハイテク領域の研究開発全般に関して、日本は米国にすでに大きく後れをとっていて、とてもとても国際競争力はないからです。これは戦後、長い間の国家の怠慢ですから簡単には解決できそうにありません。このことは筆者がすでに証明済みです(注2)。このあせりがiPS細胞研究関係者の不満を呼んでいると推測されます。今頃気付いても手遅れですが。

2.ハイリスクの研究開発にきわめて弱い「技術立国日本」
 さて戦後の日本は元々、ハイリスクのハイテク研究開発は決して強くありませんでした。当然です。日本は米国に比べて、ハイリスクの基礎研究や原理の探求研究にかける公的資金の規模が絶望的に低く、筆者の試算では日米の国家経済規模の差を考慮しても、米国に比べて対GDP比で年2兆円以上不足しているからです(注2)。ところが、世間では「技術立国日本」という洗脳的インプットが効きすぎて、多くの日本国民が誤解(日本は技術が強い国家であるという誤解)しているのです。戦後の日本は、ハイテクの技術シーズに関してほとんどが米国からの技術導入です。日本の技術的強みは、米国から移転した基幹技術(基礎的・原理的技術)を改良する部分に限られます。この部分はほとんど民間企業の研究開発あるいは技術開発の領域です。公的資金が必須のハイリスクのハイテク研究開発(注3)において、日本は今、米国のみならず欧州、中国からも遅れつつあります。最近の中国人の対日観の変化(日本より自分たちが上だという思い込み)の背景には、日本のハイテク水準の低さが彼らに知れた点(裸の王様だったことがばれた)にあります。

3.なぜ日本の公的研究予算は米国に比べて絶望的に少ないのか

 なぜ日本はハイリスク研究開発に必須の公的資金の研究予算が絶望的に少ないのか(注2)。その理由は、
(1)日本ではハイテクの基礎的・原理的研究投資はこれまで日本企業の中央研究所で主に行われてきた。さもなければ米国からの技術移転であった。
(2)研究自前主義だった日本企業が日本の公的研究機関や大学研究所にあまり期待しなかったためか、日本では公的研究予算が絶望的に少ない状態が長期に放置された。
(3)日本の国家予算を大蔵省(現、財務省)が支配しており、文系の東大法学部出身で固められてきた国家予算官僚にはハイリスクの研究開発の国家的重要性認識が欠落している。
(4)国家の研究開発予算が省単位で縦割り化・分散化されており、日本国家として費用対効果が出しにくい国家研究開発体制となっている。
 もうひとつ隠れた理由として、
(5)日本が基礎的・原理的研究に公的予算を増やすことが米国覇権主義者から警戒され、あの手この手で抑制させられてきた可能性がある。なぜなら敗戦国日本の軍事技術力が再び、彼らの脅威にならないように仕向けられているからである。
 ちなみに日本政府は米国債を買うこと(買わされること)を国家研究開発投資より優先しており、その結果、財政破綻状態の米国連邦政府は日本国民の預貯金を原資として日本政府に買わせた米国債を自国の国家研究開発の原資にしています。われわれ日本国民にとってなんというばかげた日米外交関係でしょうか。

 以上は日本国家の技術戦略および公的資金による研究開発体制の構造的課題です。これでは日本のハイテク国際競争力が強化されないのは当然であり、日本人の才能・能力の問題で決してありません。なお、この構造(欠陥構造)は日本を監視・警戒する米国覇権主義者には望ましいはずです。

4.日本の国家技術戦略は米国と大きく異なる
 よい悪いは別として、日米の国家技術戦略立案プロセスは大きく異なります。その相違とは、
(1)日本では文部科学省が主に国家科学技術政策を決めているのに対し、米国ではまず国家安全保障と国益に直結する戦略的覇権技術体系(軍事応用技術中心)と一般的科学技術体系を峻別し(注4)、覇権技術の国家技術戦略を国防総省(注5)が仕切っている。その結果、米国のハイテク成果の多くは軍事技術の派生成果(ディフェンス・コンバージョン)と位置づけられる。そしてハイリスクの研究開発に公的資金を投入することの正当化が行われる。
(2)日本では国家の科学技術予算は教育予算の延長でしかない(米国の一般的科学技術予算に相当)。一方、米国では国防(核兵器・エネルギー技術含む)、医科学(生物化学系軍事技術含む)、航空宇宙(航空宇宙系軍事技術含む)を三本柱として戦略的覇権技術体系が構成されている(注2)。この背景には軍事技術力が国家安全保障あるいは国益に直結するという国家技術戦略思想と国益最優先のミッションが厳然と存在する。他方、戦後日本の科学技術政策には米国のような骨太の国家ミッションが存在しない。単に米国を後追いするクラゲ同然である。
 上記のように科学技術の研究行為とはあくまで国家ミッション遂行の手段であるにもかかわらず、日本はそれを目的化してしまっています。日本の科学技術の研究行為のミッションを敢えて挙げるなら、それは単に米国の後追い、もしくは日本国民の人材教育でしかないのです。また、日本ではエネルギー分野を中心に経済産業省も別途、科学技術研究機関を有していますが、そのミッションは日本の産業支援でしかありません。

 もうひとつ細かい日米の相違を挙げれば、
(3)国家研究予算の思想が日米で根本的に異なる。日本にはハイリスク研究開発投資に関して確固とした予算思想が存在しないため、ハイリスク公的研究開発(一瞬先が闇で、失敗の確率が高い)の予算を一般のプロジェクト予算と同様に扱っている。すなわち、公的資金であるがゆえに、その予算の出納明細を明示することが優先される。一方、米国では研究プロジェクト責任者の専門家(サイエンティスト)にいっさいの研究遂行リスクを委ね、自由采配と成果主義を優先する。これは戦場の指揮官に全権委任する戦争の作戦プロジェクト(極めてハイリスク)展開方式と似ています。

 さらにもうひとつ日米相違を挙げれば、
(4)日本では公的研究開発予算(国立大学運営費を含む)を公務員資格の研究者や大学教員が自前の人件費として使うのが常識化している。一方、米国では公的資金の研究開発には国民の税金が使われているわけだから、公的研究開発予算はできるだけ、民間の研究開発型ベンチャーや大学研究所に競争的に配賦される。そして、米国の公的研究所の研究員は少数精鋭で予算配賦と技術評価に傾注する。なぜ米国でGSIやSRIのような独立研究機関(コントラクト・リサーチ)が成立するのかの秘密がここにあります。ハイテク・ベンチャーの活性度が日米で大きく違うのは当然です。
 最後に、日米の国家技術戦略における、もうひとつの隠れた根本的相違を挙げてみます。
(5)日本の科学技術政策は、サラリーマンにすぎない科学技術系官僚(自分がリスクをとるのを避けようとする人たち)が、科学技術専門家(主に大学教授)を委員(薄謝で調達)にしてその答申をベースにとりまとめ、国会で政治家の承認を受けるという形式(究極の無責任体制)がとられる。一方、米国では国家技術戦略立案に関して、米国連邦政府の諜報機関や国家戦略立案シンクタンクに多額の出資する民間財団が存在し、国家技術戦略に必要な情報収集と調査分析に多額の費用をかける体制ができあがっている。ただし、米国の国家技術戦略はその財団への出資者の意向に沿う傾向となる。このように米国では国家技術戦略の諜報活動(インテリジェンス活動)にかけるコストが膨大であるが、この部分が日本では欠落している。

 以上のように国防に直結する国家技術戦略のインテリジェンス活動(表に出ない予算で行われる活動)にかける予算が日米で大きく異なるわけです。ハイテク国際競争力において日米間で絶望的な差がつくのは当然です。
(やまもと・ひさとし)

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注1:ベンチャー革命No.249『日本の万能細胞研究:甘くない米国覇権主義者』2007年11月27日
http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr249.htm
注2:山本尚利、寺本義也『日本企業に求められる先端技術のR&D戦略』早稲田大学ビジネススクール・レビュー、第3号、2006年1月
注3:なぜ国家的に重要なハイリスク研究開発は公的資金投資が必須になるかというと、収益志向の民間研究開発投資になじまないからである。
注4:米国における戦略的覇権技術と一般科学技術の公的研究開発予算の構成比はおよそ7対3くらいである。
注5:米国の国防総省は国家安全保障と国益護持をミッションとする国家組織であり、その下部組織である軍隊は国防ミッション遂行の手段として位置づけられている。この思想から国益に直結する国家技術戦略は当然、国防総省の重要ミッションとなる。
9 7月

「ブッシュ政権、一将功成りて万骨枯る」

山本尚利

1.米国民からの敵視に怯えるロックフェラーの末裔
2008年7月7日より3日間、G8洞爺湖サミットが開催されます。その前日の7月6日のマスコミは当然ながら洞爺湖サミットでの議題(環境、石油、食糧問題)を取り上げています。その中で同日の朝日新聞はコッソリと「ロックフェラー家の危機感」(立野純一NY特派員)を取り上げています。今年5月末に開かれたエクソンモービル(事実上、デビッド・ロックフェラー、ジョン・ロックフェラー3世の五男の所有)株主総会でひと騒動がありました。同社の創業者ジョン・ロックフェラー1世の末裔一族がエクソン経営陣に脱石油時代に向けた技
術投資を行うよう要求(利益を国民に還元しろという要求)したからです。彼らは米国民の怒りの矛先が自分たちに向けられるのではないかと怯えているのでしょう。原油高騰で大もうけしているのはデビッド一派であって、ほかのロックフェラー末裔がもうけているわけではありません。軍事・エネルギー系米国覇権主義者(戦争屋)のボス、デビッド・ロックフェラーと、その甥、ジェイ・ロックフェラー(国際金融資本系米国覇権主義者、すなわち銀行屋のボスで、正式にはジョン・ロックフェラー4世)が米国覇権をめぐって厳しく対立しているのは事実です。この二人の対立(ロックフェラー家のお家騒動)が現在の米国経済の大混乱の震源であるのも事実です。このことは知的な米国民の間では暗黙の常識でしょう。昨今の原油高騰の恩恵により、エクソンモービルは2007年度決算で4兆円を超える純利益を計上していますが、史上空前の大もうけしているわりには、石油資源開発投資、石油精製設備投資、代替エネルギー開発投資に消極的です。しかもこの大もうけは、高いガソリンを買わされる国民の犠牲の上でもたらされています。周知のように共和党政権は伝統的に軍事・エネルギー業界(エクソンを含む)をスポンサーにしています。ブッシュ政権は過剰反応的にスポンサーの期待に応えたわけです。

2001年、ブッシュ政権誕生とともに、米国連邦政府の国家技術戦略は大きく転換されています(注1)。元副大統領アル・ゴアの主導した環境投資を大幅縮小、国家研究開発費をクリントン時代の1.5倍に増額させて先端的軍事技術(諜報技術、生物化学兵器含む)のほか、原子力発電技術、石炭液化・ガス化(クリーンコール)技術の研究開発に重点投資しています。ちなみに、財政破綻しているに等しいブッシュ政権の国家研究開発予算には小泉政権の集中購入した100兆円を超える米国債の資金(日本に返済されない可能性が大)の一部が当てられています。つまりわれわれ日本国民の預貯金(米国債購入の資金源)が実質的に使われています。上記、ロックフェラー末裔の要求(脱石油時代に向けた技術投資)はエクソンではなく、ちゃっかり日本国民の預貯金で賄われていたのです。彼ら米国覇権主義者の常套手段、それは自腹を痛めず「他人のふんどしで相撲を取ること」です。これらの事実から、今日の原油高騰シナリオはブッシュ政権を支配する米国覇権主義者(主にデビッド一派)によって20世紀中にすでに描かれていたと筆者は確信しています。

2.デビッド・ロックフェラーにとって、うまく行き過ぎたブッシュ政権
 マスコミのみならずネット上でも、サブプライムローン焦げ付き問題をみて、米国覇権の衰退(ドル覇権の弱体と多極化時代の到来)が指摘されています。しかしながら筆者の見方はまったく異なります。ブッシュ政権を担ぎ出した勢力(中心はデビッド一派)はクリントン政権時代から、中長期シナリオを開発しており、ブッシュ政権はそのシナリオに沿って誕生し、政権獲得後、そのシナリオを忠実に実行し、所期の成果を挙げたという見方です。ブッシュ政権には、非常に困難なシナリオを成功させる知能をもった有能な人材(天才的な悪知恵の持ち主)が配置されています。彼らが20世紀末に描いたシナリオとは、まず9.11事件(中東戦争の起爆剤)を起こして、テロとの戦いを大義名分に中東の反米大国イラクとイランを先制攻撃し、自分たちの所有する軍事産業を潤わせると同時に、イラク、イランに彼らの傀儡政権を樹立して、中東石油利権を奪還するというものです。その際、中東石油の供給不足および中国、インドなどの石油需要増から21世紀の原油高騰は不可避とみなしていたわけです。それに備えて、2001年以降、彼らは用意周到に原子力発電とクリーンコールの技術投資を強化していたのです。彼らのシナリオでは、遅くとも2006年までにイランを先制攻撃するはずだったのが、2008年7月現在、まだ実現できていません。この点のみが彼らの誤算なのです。なおイラクの混乱の長期化は、もともと本命の攻略ターゲットであるイラン先制攻撃に必須の条件(イラク混乱を名目に増員したイラク駐留兵力を速やかにイラン先制攻撃に転用するため)だったので、すべて意図的に計画されたものであると思います。したがってイラクの長期混乱・泥沼化をもってブッシュ政権がイラク戦争に失敗したとみるのは早計でしょう。にもかかわらず、2006年6月の世界的寡頭勢力(ロスチャイルド財閥、ロックフェラー財閥を含む)の秘密会議ビルダーバーグ会議(毎年、G8サミットの前に開催される)でブッシュ政権の企むイラン先制攻撃を反対されたこと(注1)が、ブッシュ政権のイラン先制攻撃シナリオを狂わせたのです。
おそらく、EU支配のロスチャイルド財閥とアンチ・デビッドのジェイ・ロックフェラー(オバマ支持の民主党上院議員)の意思が強く働いたものと推察されます。にもかかわらず、ブッシュ政権は、当初のシナリオ通り軍事産業を潤し、期待以上の石油高騰を実現したので、デビッド一派にとって、ブッシュ政権支援の費用対効果は十分に採算がとれたわけです。彼らにとって原油高騰の短期的マイナスは、派生的に石油産出国ロシアにも恩恵のおこぼれが回ること、そして反米石油産出国イランにも同様の恩恵が回ることです。しかしながら中長期的には決してマイナスではありません。なぜなら石油で潤うロシア(仮想敵国)の軍事的脅威が再び高まり、また敵国イランの軍事的脅威もさらに高まるので、彼ら戦争屋にとって米国軍事産業強化の正当化に新たな口実ができるわけです。ちなみに民主主義国の戦争屋の戦略とは、敵をいかに攻略するかと同時に、敵の脅威をいかに高めるかという相矛盾する二律背反の側面を常にもっています。民主主義国では敵の脅威が下がれば、防衛予算が減額されるからです。

3.原油高騰の派生効果、人口削減計画の始動
 さてブッシュ政権を支配するデビッド一派のうれしい誤算、それは予定された120ドル/バレル(GBNのピーター・シュワルツの設定シナリオ)を大きく超える原油高騰(2008年7月140ドル突破)が実現したことです。デビッド一派にとってブッシュ政権操作はうまく行き過ぎたのです。ブッシュ政権のもたらした原油高騰の派生効果は計り知れません。原油高騰に伴って予定通り世界的に食糧高騰が発生し、世界的寡頭勢力が長期的視野で密かに企んでいる人口削減計画のアジェンダ始動が目前となっています。世界の貧困国から順番に食糧不足に陥って、人口減少が起きるでしょう。今、世界は彼らの本音の狙い通りに推移しています。その意味でキレイゴトに終始する偽善的G8洞爺湖サミットは、彼らの本音をカムフラージュするのにもってこいのイベント(目くらまし)に過ぎません。このミエミエの茶番劇も、世界規模での多様なネット情報の提供によって、世界のネットナビゲーターからは、当の昔に見透かされています。
G8洞爺湖サミットを得意気に報道する日本のマスコミが滑稽にみえます。だからこそ、ウラ事情を知る朝日新聞NY支局のマトモなジャーナリストが、あえてG8サミット前夜、米国の帝王ロックフェラー財閥の話題をさりげなく掲載したのでしょう。その狙いに読者のどれほどが感づくのでしょうか。
さて傲岸不遜の極致、デビッド一派の思わぬ誤算、それはイラン先制攻撃の遅れに加えて、ネット世論の強大化です。9.11事件が自作自演(Inside Job)ではないかという見方がネット世代を中心に米国民の常識(2006年のCNN調査によれば米国民の75%が9.11事件は政府の自作自演ではないかと疑っている)となっています。米国民はブッシュ政権になってガソリン価格が4倍に暴騰した根本原因に気づき始めています。寡頭勢力に牛耳られるマスコミや証券会社のエコノミストは石油高騰理由についていろいろ詭弁を弄していますが、賢明な米国民も少なくないのでもうだまされないでしょう。デビッド一派への恨み(「一将功成りて万骨枯る」に対する恨み)は日に日に募っています。デビッド一派(戦争屋)は大もうけできたものの、米国の国富が偏り過ぎて、結局、米国の国民経済がガタガタになってきたのです。「過ぎたるは及ばざるが如し」とはこのことです。それをみて、デビッド一派のおこぼれにすらあずかれない他のロックフェラー一族はとんだトッバチリだと怒ったのです。上記、エクソンモービルの株主総会の騒動の根本原因は、米国民の恨みがデビッドのみならず、ロックフェラー一族全体に向けられるのではないかという危機感の表れです。

4.米国民の9.11真実解明要求にこたえて、ブッシュを生け贄にする計画が進行か
9.11事件に関する多数のネット情報から推測して、2008年末、ブッシュ大統領の任期満了の引退とともに、ポスト・ブッシュの次期政権の下、米国民の9.11事件の真実解明の要求が爆発する可能性が高いと思います。9.11事件の直接の犠牲者が3千人、発ガン物質の被害による救助隊員など二次犠牲者が千人規模といわれており、ただでは済まされません。2007年秋、ブッシュ大統領の暗殺を
予告するような不気味で悪趣味の映画がすでに封切られています(注3)。ブッシュ大統領はデビッド一派の傀儡(パペット)に過ぎないわけですが、いざとなったら、彼に一切の罪を押し付けようとするシナリオが描かれているかもしれません。しかしマスメディアによるマインドコントロールという彼らのいつもの手口もすでに色あせています。現代のインターネット社会は60年代のケネディ暗殺時代とは違います。米国の知的ネット世代は今度こそはだまされないでしょう。
(やまもと・ひさとし)

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注1:拙著『日米技術覇権戦争』光文社、2003年
注2:ベンチャー革命No.200『北朝鮮ミサイル:日本国民をもてあそぶ玩具』2006年7月5日
  http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr200.htm
注3:ベンチャー革命No.246『英国映画「大統領暗殺」の黙示』2007年10月17日
  http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr246.htm

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